「相続人なき自動車」のゆくえ~マイカーにも終活が必要!?
先日、こんな問い合わせを受けました。曰く

車の名義変更をお願いしたいんですが
ちょっと事情が複雑で・・・
何がどう複雑なのか、事情を聞いてみると…
- 借りている自動車を譲ってもらうことになった
- 元の持ち主(車の所有者・名義人)は死亡していて、その子供から借りている
- 元の持ち主とその子供(貸主)とは血が繋がっておらず、養子縁組もしていない
ということでした。

なるほど、こりゃ複雑だな…
自動車の名義変更には、
①自らが自動車を譲り受けた理由
②その理由が正当であるという証拠
が必要です。それぞれ
①としては、売買、贈与、遺言や相続などの事情がそれにあたり、
②としては、譲渡証明書・印鑑証明書や遺言書、遺産分割協議書、戸籍等の書類
が必要になります。
今回のケースでは、車の貸主は元の持ち主が結婚した相手の連れ子であり、養子縁組をしていないため、相続権がありません。
相続人がいれば、いったんその人が車を相続した上で、その人から譲ってもらうことができるのですが……したがって、残念ながら通常の名義変更手続きでは不可能です。
では、この「所有者なき車」は一体どうなるのか?
所有者がいないので、売買や贈与はもちろん、廃車手続きすらできません。

このまま「幽霊」のごとく、壊れるまで、この世を彷徨うほかないのでしょうか?

いえ。乗って使い続けるにも「車検」の壁があるので、難しいのです。

え・・・それじゃあどうしたら・・・

ご安心ください。そういうケースも踏まえての解決策はありますよ。
ということで、前置きが長くなりましたが、結論として、通常の手続きではないだけで、名義変更をする方法はあります。
そして、通常の手続きではない、というのは、「費用」と「時間」がかかってくるからです。
所有者が亡くなった自動車は、相続人がいない時点で「相続財産法人」の一部となります。
民法第九百五十一条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
民法 | e-Gov法令検索 より引用
たとえ相続人がいなくても、管理・精算が必要な財産(相続財産)が残された場合、その財産は法人化し、その権利・義務の主体として、手続きを進めることを可能にできるものとなるのです。
そして、この「相続財産法人」を処分するために、家庭裁判所に「相続財産管理人」を選んでもらう必要があります。
選任された相続財産管理人(通常、弁護士か司法書士)が、
・債権申立ての公告(約2か月)
・相続人捜索の公告(約6か月)
・特別縁故者への財産分与の申立て(約3か月)
を順に行い、特別縁故者がいれば財産分与、いなければ自動車は国庫に帰属することになります。
今回のケースで言うと、貸主が特別縁故者と認められ車の財産分与を受ければ、相談者さまが貸主から車を譲り受けることが可能となります。
ただし、上述のとおり1年以上の時間と、数十万円の費用(手続き費用と相続財産管理人への報酬など)がかかります。

オー!マイガー!?

ただし、このとおり、このタイミングでのご相談となると手続きに関しては行政書士の管轄外なのです。
相談者さまのお悩みがスムーズに解消されることを祈っています。
さて、では、元の持ち主(あるいは血の繋がっていない子供)はどうすればよかったのか?
そして、これは行政書士として私がお手伝いできる分野の話となります。
答えは「遺言を書いて(もらって)おく」です。
それなりの体裁の紙に「私の車(車種、ナンバー等)は、〇〇〇〇に譲る。〇年〇月〇日 (氏名)〇〇〇〇」と自署して捺印しておくだけで大丈夫。これで元の持ち主が亡くなられたあと、指名された人が受け継ぐことができます。
(ちなみに、チラシの裏、鉛筆、シャチハタはNGです。)
また、もしできれば公正証書にしておけば、「大丈夫さ」が大幅に増します。そういう時はぜひ当事務所にご相談いただければうれしいです。
たかが遺言、されど遺言。遺言一つで、こんなに変わるんですよね。

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※(この事例は、実際の相談を元に筆者が多少のフィクションを加えてご紹介しています。)
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